山崎代表の
コンサルフィーは合法か?
11月13日、トランプ(矢作和徳代表、埼玉県川口市)が楽天グループ(三木谷浩史代表、東京都世田谷区)、同社が物流事業委託をしていたスマートデリバリー(山崎純代表、同新宿区、以下スマデリ)を相手取った損害賠償請求裁判の審議が行われた。同裁判は、トランプが過去に「自社化」を理由に契約解除された楽天配送案件が実際には、楽天エクスプレス事業管理者らへキックバックを渡していたスマデリへ委託されるようになったことを受け、逸失利益や経費などを損害賠償請求したもの。今回審議ではトランプ側の主張に反対する形でスマデリの山崎代表の陳述書が提出された。(小倉太郎)
山崎代表の陳述書には「トランプの契約解除が決まった年の8月に楽天の村上剛史氏から川口営業所など相談され、トランプが契約解除されるに足る理由も聞いていること」「スマデリに委託が決まったのはそれ以前からのスポット便手配などの努力、実力が認められたものと認識していること」などの主張と共に「コンサルフィーを村上氏、滝澤志匡氏へ支払っていた」としながらスマデリ設立に村上氏らが関与していないなどトランプ側の主張を否定。
なお、本紙が独自に取材した現場からの評価は異なる。当時の楽天事業新木場営業所の元ドライバーからは「楽天側からは、年末にかけて荷量を増やし、自社配送の練習もかねてとスマデリ経由のドライバーも投入されたものの、日本語での会話もおぼつかないドライバーが多数混じっており、お客様からのクレームも一時期頻発していた。ピッキングも追いつかなくなり管理者の労働時間は莫大なものになっていた」としたほか、「日本語能力が怪しいドライバーは営業所からの指示も理解していないか、理解できないようなそぶりを見せオペレーションが滞ることは珍しくなかった。不審に思った管理者がビザの提示を求めたところ、翌日から全員営業所に来なくなったのは今でも覚えている」と教えてくれた。
業務遂行能力のあるドライバーも来ていたとのことだが、スマデリを経由していた企業のドライバーは通常の倍、報酬が支払われていたという。スマデリは一時的に業務受託をしていたが、その後契約を解除されている。解除前後と見られるタイミングでは村上氏からトランプへキックバックを条件に業務受託を再開する旨の連絡もあったという。
当時のトランプ川口営業所長・中村氏
不適切行為は行っていないし、ありえない
当時のトランプ川口営業所長だった中村慎志氏にも確認することができた。山崎氏が陳述書でトランプ側からドライバーや車両を引き取るよう依頼したと証言している部分に関して否定した上で「川口営業所はトランプの品質が楽天から評価され、任されていたはず。楽天側があげた不適切行為は行っていないし、ありえない。川口営業所がモデルとなって全国展開した案件もある」と話す。
同営業所の評価に関し新木場の元ドライバーからは安全管理や生産性の高さを例に「確かに、川口営業所の評価は高く新木場にもその噂は楽天社員を通じて耳にしていた」と本誌に回答がある。
なお、中村氏は既にトランプを離れ一般貨物の運送会社でドライバーをしており現在トランプとは利害関係に無い。「私は物流という仕事が好きでトランプを離れても物流業界にいるが、物流業界には不正が多すぎる。その実態はトランプを離れた後も前も、何度も見てきた。今回の裁判が注目され物流業界の不正が一件でも多く無くなりドライバーが安心して働ける業界に生まれ変わってくれれば」と訴えている。中村氏の陳述書は今回の裁判に提出された。
次回裁判は12月14日の予定。
特別背任罪や収賄罪が成立する可能性がある
オーケーパートナーズ法律事務所・岡代表
オーケーパートナーズ法律事務所(東京都港区)の岡篤志代表へ業務を受注するにあたり、受注元企業の決定権を持つ者へ受託者が金銭を支払う行為に違法性がないのか質問すると「受け取った金銭が少額の場合は犯罪が成立する可能性は低いが高額な場合、背任罪、対象者が取締役の場合などは、特別背任罪や収賄罪が成立する可能性がある」と回答。
同氏は「より良い企業へ発注できたところ、キックバックのために特定の会社に業務を発生するという行為は私欲のためリベート分だけ会社に損害を与えたと評価することができる」としており、また「取締役等が職務に関して、不正な頼み事を受けて金銭等の利益を受け取った場合は、収賄罪が成立する可能性があるが適用された事例は少ない」としている。
また、金銭を渡す側の違法性については、「支払いが会社に損害を与えることになるのであれば、同様に違法性を指摘されるものの、会社の利益のために行っていると見なされた場合、民間企業同士ならば犯罪が成立する可能性は低い」としている。
今回の裁判に関しては「滝澤、村上氏らが金銭を受け取ることによって楽天グループに損失があるのであれば、発注企業の決済権者に対し背任罪又は特別背任罪が成立する可能性はあるが、特別背任の被害者となるのはまず楽天グループ。背任があったと仮定するのであればだが、楽天か、株主の告訴が動かなければ有耶無耶となってしまう可能性が高い」と指摘している。
ほかにも「本来、取締役が違法な行為をし、会社に損害を与えたなら会社が損害賠償を請求することになる。取締役同氏の馴れ合い等から訴訟がない場合などは監査役が会社を訴訟しなければならない(会社法386条1項)。または株主代表訴訟を起こし損害賠償請求を行うことも可能」と指摘する。
楽天エクスプレス事業の元下請け
架空請求関与の疑いで書類送検
11月16日に、スマートデリバリーの山崎純代表が架空請求に関与した疑いでさいたま地方検察庁へ書類送検されたと、本紙へ被害者企業からリークがあった。
同氏は過去に別企業でも代表を務めており、当時取引のあった企業から物流費用を大幅にかさまし請求する形で奪取した疑いがかかっているという。被害企業内で架空請求に協力していたとされる元役員らは既に民事訴訟で敗訴しているとのこと。
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