更新日:2023/08/26

トランプVS楽天・スマデリ(8月8日)

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具体的な損害論に言及
適切な補償を求める

 8日、トランプ(矢作和徳代表、埼玉県川口市)が楽天グループ(三木谷浩史代表、東京都世田谷区)およびスマートデリバリー(山崎純代表、同三鷹市、スマデリ)を相手取った裁判期日が行われた。同期日では、具体的な損害論に言及されている。楽天は川口営業所の費用に相違を主張したほか、倉庫費用も契約終了後にトランプが倉庫を解約しているはずとし、トランプ車両保管と逸失利益の関係を否定。加えて約定の倉庫金額との差異も指摘している。また逸失利益の請求対象期間の中でも不相応に長いとも主張。加えて経費率など資料提示を求めた。(小倉太郎)

 トランプは今回の主張で逸失利益に関し、そもそもの半永久的かつ継続的な契約を前提とする案件であり多額の投資をしたと主張。そのため、せめて9ヶ月間の補償を求めている。加えて車両準備費用や倉庫など不動産を利用するうえでの敷金礼金を適切に補償することを求めたほか、車両費用も軽貨物車両は資産性を有せず契約解除に伴ってドライバーの流出と合わせて転用が困難になった点の補償なども求めた。
 なお、これら実費被害に加えて売り上げなど低下に伴う資金調達や楽天グループを訴訟してから大手通販荷主の案件などを受けられなくなった損害にも言及している。

身勝手な行為による
損失を認められるべきでは
トランプ・矢作代表

 矢作代表は、「本件は通常の契約解除に伴う損害賠償ではなく楽天側の身勝手な行為による損害を訴えるもの。楽天が一般メディアなどを通じ宣伝を続けていた点も、事業が長期的に継続するものであると下請け事業者へ認識させるに十分なものだった」と話す。
 委託解除に伴い稼働不可となった車両についても「車両はドライバー、仕事と全てがそろわない限り売り上げにつながらず赤字になる。荷主の要請でそろえた車両が、一方的かつ適切でない理由から売り上げを産まなくなったのであれば損失を認められるべきではないか」と指摘する
 続けて「当社の品質は他の荷主からも評価されるものであり、自社化を名目に営業所を剥奪されまもなく委託されたスマデリとは比較しようもない。現場のドライバーや管理者が築いてきた信用や銀行からの評価も事件をきっかけに不当に損なわれた。実際の損害は今回の請求を上回るのが実情。楽天には早期に誠実な対応を求める」としている。
 同氏は今後ドライバーの求人費用など当初の請求には含まれなかった損害について請求をすることを検討しているという。

契約後のやり取りなど
こまめな保存と証拠保全が重要
オーケーパートナーズ法律事務所・岡代表

 オーケーパートナーズ法律事務所(東京都港区)の岡篤志代表は、「トランプ社の主張は、被告楽天および被告スマデリが原告の営業所の営業権を侵害したこと、被告楽天が原告との取引を全て解除した行為について不法行為または債務不履行にあたるというもの」とし、前者については、楽天エクスプレスの責任者であったとされる村上剛史氏または滝澤志匡氏とスマデリの代表取締役山崎純氏が癒着していたことを山崎氏が認める音声データがあることなどから、何らかの関係性があり、それを根拠に「原告から被告スマデリに契約を移行したと評価できるように思える。したがって、営業権侵害があると判断される可能性が高いのではないか」と指摘。
 しかし請求された時期全ての配送費用損害といえるか否かの判断は難しいところであり、契約継続の可能性、継続的契約への期待権等について裁判所がどのように評価するか分かれる部分はある模様。
 後者については「9ヶ月間の配送費用が損害となるかであるが、継続的に取引されるという原告の期待がどこまで保護されるかで損害額も変わってくるので、契約締結までの経緯、設備投資額の大きさ、契約期間等が重要になる」と分析。
 続けて「本件事案を端的にまとめれば日本有数の大企業とその下請を行う運送会社との争いである。本件のように、継続的取引であると期待し、大企業から新規の拠点を早期に準備するよう要請があれば、運送会社は当該要望に従い、人を集め、車両を準備するなどの多大な投資をすることになる。もっとも、人や車だけ集まっても仕事がなければ余剰な人員・設備隣支出だけでていくことになる」と指摘。
 同氏は「このような事態を避けるために下請法では主に適正な下請代金などの下請事業者の利益を保護する。独占禁止法では取引の相手方に対し、優越的なちいを利用して、正常な商慣習に照らし不当に不利益を与える行為を禁止するなどして中小企業が大企業との間で契約交渉を行うというのは現実的に困難であるため、まずはきちんと契約書を作成し、契約に至るまでのやり取り、契約後のやり取りなどをこまめに保存し、証拠を保全しておくことが重要である。また、大企業に屈しないという業界全体での態度も今後は必要になってくると考える」と話す。
 次回は9月に損害論の取りまとめを予定。その次には証人喚問が予定されており、トランプは元楽天エクスプレス事業責任者らの召喚を求めるという。

元楽天社員が証言
スマデリの業務クオリティ

 トランプが楽天グループおよびスマートデリバリーに対し起こしている裁判は損害論が審議される程度まで進行している。
 8月審議の中で楽天グループは、トランプが業務受託していた川口などの営業所の自社化を理由に解除した天について、自社化の取り組みの存在や解約も正当な契約に基づいて適切に行われたと主張。加えてトランプが主張した契約解除の「虚偽の理由」も否定している。
 さらに同営業所などでスマデリへ業務委託が行われるようになった点については、単発の発注を行った時期と内容はトランプの主張を認めつつも、設立間もないスマデリへ発注することが不自然であるとした主張などに対して山崎代表の業界での経験や、実際の業務遂行に関して問題は確認されていない点などをとりあげた。
 しかしこの点に関し、本紙の取材に元楽天社員がコメントしてくれている。同氏は「当時管理していた営業所において空き枠があれば即座にスマデリを入れるよう車内で通達があった。しかし、ドライバーは日本語も満足に使えない外国人が来るなど課題があった。ある営業所では1ヶ月に200件の誤配があっただけでなくドライバーが誤配のカバーを断って逆切れする始末。スマデリの入った営業所は常にトラブルが絶えなかった」とし、続けて「真面目なドライバーが来てくれる営業所もあったが、中抜きが酷く、末端には元値の半分ほどしか支払われず罪悪感があった。もちろん悪質な外国人ドライバーでも搾取があり1日3万円で発注したところ、末端には8000円しか支払われていなかったケースも確認した」と指摘。
 なお、悪質なドライバーや必要以上の仲介業者の存在に関しては「本来であれば悪質な1次請け事業者を排除し正常な形を目指すところだが、スマデリなど品質の悪い事業者へ発注するよう社名が下っていたので不可能だった。不当な中抜き排除やドライバー個人の出禁といった改善指示も直接、具体的に強制力を持って指示すると下請け法に反してしまううえ、強制力のない指示にスマデリらは従わなかった。品質向上に向けた我々社員らの思いは踏みにじられた」と訴えている。
 同氏をはじめとした元楽天社員らは現在他の物流企業や物流事業部を持つ企業へと転職している。同氏は「スマデリのクオリティはこれまでの人生で見てきた中で群を抜いて悪質。自分の知る限り、転職した仲間全員が同じ被害者を出さないよう不正で日本の物流業界の品質を落とさない思いを共有した。皆あそこまで酷い現場は見たことがない」と話す。(小倉太郎)

ついに8月8日でこの裁判も損害論へと移りました。
次回期日は9月14日となっております。
9月14日の次はいよいよ証人尋問となります。
法廷で行われますのでぜひ傍聴にいらしてください。

 

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